電気二重層の電位分布を計算した話 (1)

間に何もなければただの空気コンデンサー

<基本はクーロンの法則>

正と負に帯電した物体間には、電荷の大きさ Q の二乗に比例し、距離 r の二乗に反比例した力が働きます。クーロン Coulomb が発見した有名な法則です。
次に片方の物体を小さくし、同時に電荷も小さな δQ にします。小さくすることで自身による静電誘導が小さくでき、また溶液や結晶の中にも入り込めるようになります (まあ思考実験ですね)。この微小電荷に働く力 δF は δQ に比例します。そこで比例係数を電場 E と呼びます。ベクトル量です。

<ガウスの定理>

閉領域 D に含まれる電荷の総量が Q、面の任意の場所における外向き法線ベクトルが n であれば次のガウス Gaussの定理が成り立ちます。
金属では内部に電荷が存在しないので Q のもとは表面電荷です。その密度を σ で表します。ε0は真空の誘電率です。 電場の強さと表面電荷密度が比例するという、重要な知見が得られます。

<ガウスの定理の微分形>

電荷の空間分布ρがある場合はガウスの定理の微分形が便利です。

<静電ポテンシャル>

力学ではポテンシャルエネルギー(スカラー)の勾配が物体に働く力(ベクトル)になりました(上に行けば大きくなる重力ポテンシャルと落下させようとする重力の関係です)。 同じように静電ポテンシャルφというスカラー量を考えます。電位ともいます。

定数項は勾配にきかないのでどうとってもよいのですが、アース(地球大地)をゼロにとるのが普通です。

<ポアソンの方程式>

左の二式からポアソン Poisson の方程式が得られます。結局、これをどう解くかが今後のテーマになります。

<平行平板コンデンサー>

さて、間隔 d で置かれた金属板に電圧 V を加えます。これはφ(0)=0, φ(d)=V と同じことです。勾配は V/d なので電場の強さは E=V/d、 表面電荷密度は σ=ε0V/d になります。金属板の面積が S なら全電荷は Q=ε0SV/d になります。静電容量の定義から
C=Q/V=ε0S/d が得られます。これが空気コンデンサーの式です(かつては空気バリコンがラジオの重要部品でした)。


お薦めめする参考書: 高橋秀俊, 電磁気学 (裳華房, 1959).

3-11-2020, S. Hayashi