電気二重層の電位分布を計算した話 (2)

間に絶縁体があれば実用のコンデンサー

<絶縁体は誘電体>

絶縁体とは読んで字のごとく電気を通さない物質ですが、本質が見えてきません。しかしもう一つの用語である誘電体は今からお話しする内容にぴったり合います。
今、電極間に電圧 V をかけたとします。当然電極表面には電荷が密度σで出現します(図左)。 そして+側の電極に向き合った誘電体の表面にーの分極電荷密度 σT が誘い出されます。 前回のガウスの定理により、誘電体の内部にはE=(σ-σT)/ε0 の電場ができます。そのままでは電場が弱くなるので電極間の 電位差は下がってしまいます(図中)。
そこで電源は頑張って電荷を送り込んで電位差を V に戻します。送り込まれた電荷の総量 Sσ' が半端ないのが実用のコンデンサーです(図右)。

<誘電分極でコンデンサー容量が増える>


3個あった±が7個に増えています。

<物質内部で起きていること>

<比誘電率>

b> 上の話を整理します。電位差を V のもとで電極には σ' の電荷密度、誘電体には密度で σT の分極電荷が生じているものとします。 その比をκとすると次の関係が成り立ちます。
εは比誘電率と呼ばれる量で、水なら80です。圧電セラミックスでは数万になるので電子部品に使われています。 いずれにせよκは 1 に近いので電極の表面電荷がほとんど分極電荷で打ち消されていることが分かります。

<電気二重層の出現>

電極と誘電体の界面には±の電荷がむきあっています。これを電気二重層(electrical double layer, EDL)といいます。 このページで扱った誘電分極では、極性分子が向きを変えることやイオン結晶内の原子配置がゆがむことでEDLができます。

<そのほかのEDL>

半導体のpn接合では不純物の拡散でEDLができます。次のページの電気化学ではイオンが電極に寄ってくることでEDLができます。

3-11-2020, S. Hayashi