電気二重層の電位分布を計算した話 (6)

電極との間に隙間があると: Gouy-Chapman-Stern EDL

<何が問題か?>

ページ(3),(4) にある η(ξ)関数のグラフ(電位分布 φ(x) を無次元化したグラフ)を思い出してください。 縦軸の値 η0 が大きすぎるように感じられます。これは電極表面に大きな表面電荷と電場が出来ていることを意味します。 このようすは負電荷がべったりと正の電極面を覆っているとイメージすることができます(図(a))。

<電荷のもとはイオン>

イオンには大きさと形があるので(つまり点ではないので)、負電荷が電極に接するとは限りません。 負電荷がふんわりと覆っているとイメージする方が適切でしょう(図(b))。

<隙間を作る>

ふんわりを数学的に扱うのは難しいので、電極と負電荷の間に厚みδの隙間を作りましょう(図(c))。 隙間の外側ではページ(3),(4) の取り扱いが使えます。

<電場の分布>

隙間があると+極と−極の間で電場 E は、図のようになっていると考えられます。電流が流れていなければ E=0 になりますが、 さもなければ常に E>0 です。隙間におけるφの勾配は、解曲線のそれと値が同じです。

<計算例 (1)>

まず電流が流れない場合のGouy-Chapman-Stern EDL から。右の図は、隙間(P)が δ=0.1、Pでの電位が 5.3です。 青は隙間から右の数値解で、すみやかにゼロに落ちます。Pから左に延長するとが赤い直線になって切片が7.3になっています。もし隙間がなければ縦軸の 上の●に至ります。

<計算例 (2)>

次は電流が流れているときのGouy-Chapman-Stern EDLです。図は、隙間(P)が δ=0.1、Pの電位が14、電極上の電位が16の電位分布です。 青は数値解(κ=10-4の数値解、それをPで延長したのが赤い直線です。

Pを通る解曲線は一通りしかありませんが、これを縦軸方向に延長すると切片が40の曲線になります。これは隙間がないとしたときの解曲線です。冒頭で述べたとおり、大きすぎるように感じられます。

3-26,24,22-2020, S. Hayashi