CdI2型結晶構造の3Dグラフィックス表現

<なぜ CdI2?>

NiH電池やNiCd電池の正極材料としてよく利用される NiOOH/Ni(OH)2は、CdI2型の構造が基本骨格だそうです。 つまり、大きいほうの陰イオン(I-、OH-)が六方最密充填構造 hcp (クリック) をとり、隙間に小さい方の陽イオン(Cd2+、Ni2+) が入るというのです。 空間認識が苦手な私なんかには、隙間はイメージしづらいものです。そこでいろいろ工夫してみました。

<hcp の隙間>

(a) ではビー玉を層状に重ねます。基本単位を取り出すと一番右の単位格子(菱形)になります。ビー玉が2個、隙間が1個です。
(b) は隙間に小さい玉を置き、それを基準として右の単位格子を作ります。ビー玉が2個入ります。

<結晶のグラフィックス表現>

ビー玉原子と小球原子を空間内に配置して結晶を描くと中が覗けないので、原子を小さくします。そして単位格子を平行移動して原子座標(x,y,z)を生成します。 結晶を(x,y,z)座標系に固定しておき、そこから回転できる(x',y',z')座標系を考えます。 z’がzとなす角度(θ,φ)(と場合によってはもう一つψ)に対応する回転行列 R を作ります。 目線をz'軸とするので(x',y')が眼に見える画像となります。

図の上面図はφ=90°、側面図はθ=90°、透視図はθ=10°、φ=74°として得られたものです。

<ステレオグラフィックス.1>

右目用と左目用の図を φ±Δφ に対して作成します。小さい絵を拡大肉眼(下図、瞳間隔7cmと6cm)を通して眺めると立体的に見えます。 上右の図よりも臨場感があります。 必要に応じて色が増やせるという利点があります。

<ステレオグラム.1>

この図そのままでは見えづらいかもしれません。その場合、図を縮小するとか間隔・視距離を調整するとかの必要があるでしょう。

<ステレオグラフィックス.2>

3D映画の原理(右眼用と左眼用の画像を眼鏡と同期させて切り替える)を用いると効率的に立体視できますが大げさになるので、下記の二色眼鏡(つくば科学博)を用いて右眼用と左眼用の図を同時に見ることを試みました。

<ステレオグラム.2>

Δφ の異なる画像を載せます。 残念ながら青眼鏡の弁別性が悪くて立体視できませんでした。色の選択など、改良の余地がまだあります。

<結論>

自分の好きな角度・格子配置で絵を描くというコンセプトでプログラムを作りました。 処理系は XDS modula-2/TopSpeed add-on/Hgraph ですがいかにも古いです。 グラフィックス機能に優れたシステムであればもっとインプレッシブな絵が描けるでしょう。

 

プログラムについて(認証あり)

2-23-2022, S. Hayashi