硫酸酸性 CuSO4 のイオン組成

<問題の意味>

硫酸銅CuSO4を硫酸H2SO4に溶かした溶液は、銅電気メッキの電解液としてよく知られています。 溶液の中にはCu2+, H+, SO42-, HSO4- がイオンとして含まれています。 未解離のH2SO4も残っています。一説では CuSO4もあるとのことです。これらの濃度を推定しようというのがここでのテーマです。

<仮定>近似ともいうべき仮定を設けます

  • 平衡定数が濃度で表される(活動度係数を1とおいてよい)。
  • H2O は単なる溶媒であってH+の授受に関与しない。従って上記の分子種間で物質保存則が成り立つ。
  • CuSO4 は100%解離する (解離度 β=1)
<平衡定数>
<物質量の保存>
仕込み濃度をCuSO4がN1、H2SO4がN2とすればSとHについて
変数が4個、関係式が4個であるから数学の問題としては解けます。
<解離度で考える>

CuSO4から生じたSO42-は濃度が N1(1-α2)に変わり、 一方H2SO4は N2(1-α1)に変わります。 HSO4-には両者からの寄与があります (α の添え字 1,2 はH2SO4の1段目、2段目の解離に対応します)。α1を消去して x=α2 についての3次方程式が得られます。 数値解 α12 を吟味して物理的に意味のある解離度を得ます。

<補足>

CuSO4の解離度 β の値が分かっていれば N1をβN1とすれば問題が解けます。 ただし、仕込み濃度が変われば β も変わるので注意が必要です。

<計算例>

ある文献に出ている値 K1=82.58 mol/L, K2=0.01133 mol/L を用い、 N1=1 mol/L, N2=0.1〜10 mol/L として得られた図です。これらの値は、平衡定数と保存則を満足しています。

<特別な場合 (1) 硫酸の解離度>

2段階の解離反応を解離度α12で表します。平衡反応

に代入すると3次方程式が得られます。N2=1 mol/L ではα1=0.988,α2=0.0112です。

化学大辞典には解離度が50%とあります。そこで K1を 1/100 に小さくしてみると α1=0.585,α2=0.0188 となります。

<特別な場合 (2) 硫酸銅のpH>

H2O は単なる溶媒ではなく、次のような加水解離反応に関与します。

pHの大きさには、難溶性である Cu(OH)2の溶解度積が大きく影響すると考えられます。

3-12-2022, S. Hayashi