太陽の運行 (1)

太陽の位置から時刻を知る試みは昔からなされてきました。 すぐに思いつくのは日時計ですが、太陽の追尾装置(Sun tracker)を自作したという記事が目に留まりました(J. Bachiochi, Circuit Cellar, No. 235, p. 68 (Feb., 2010); No. 236, p. 54 (Mar., 2010))。 原理は右図の通りで、4つの光センサーの光量が同じになるように角度を制御します。こうして水平面内の回転角ψと上下方向の仰角φのデータが得られます。 これに緯度αの情報を加えれば時刻が判ります(場合によっては標準時からのズレ、つまり経度の情報も)。

そこで私は考えました。そもそも太陽の位置(ψ,φ)は年間を通してどのような値を取るのか?

というわけで計算式を作り、ソースコード(SunTracker.MOD)を書き、いつくかのグラフを得ました。

計算方法を簡単に説明します。まず地球という球体が円形の公転面を365.24219日で一周するとします。中心にはもちろん太陽があります。 この球体は公転面に対して23.43°回転軸が傾いています。そして観測者は球の回転軸から、つまり北極から(90°-α)の位置にいて 太陽を眺めます。その時の(ψ,φ)がどのような値になるになるかを直交座標系の回転によって算出します。

話を簡単にするために、太陽が南中したとき(ψ=0°)を12時としました。

まずは東京付近の緯度α=35°におけるψ対φのグラフから。15分おきに(ψ,φ)を打って直線で結ぶ作業を半年間(冬至から翌年の夏至、または夏至から同じ年の冬至まで)毎日繰り返すと右の図が 得られます(以下の図はすべて半年にわたって作ったグラフです)。夏至と冬至の間にぎっしりと曲線が詰まって見えます。

時刻のデータを付け加えると夏至では、日の出が真南から118.9°で時刻は4:49、日の入りもほぼ同じ位置で時刻は19:10、昼の長さは14時間21分です。 冬至では、日の出が真南から60.5°で時刻は7:10、日の入りの時刻は16:48、昼の長さは9時間38分です。 また、日の出・日の入りの早い日・遅い日とは2週間近くのズレがありました。

いつだったか台北(緯度α=25°)を訪れたときの話です。 昼食をどこでとろうかとブラブラしていてふと足許を見たら影がほとんどできていないことに気が付きました。歩いていれば自分の影が見えないのですよ。 「ここは日本じゃない!」を実感しました。

右の図は一日おきに(ψ,φ)を打ったのですが、夏至の頃ならお昼ごろ、88〜89°になることがわかります。 念押しのために古いパスポートを引っ張り出したら、確かに6月中旬のスタンプが押してありました。

いっそのこと赤道まで足を延ばしましょう。緯度α=0°の図を右に示します。やはり一日おきに描いてあります。春分・秋分では太陽が真東から真上に上り、真西に沈みます。

その時期をはさんで、太陽は同じ仰角で見えますが、南と北で逆になります。日本では味わえない不思議な体験が、ケニアとかエクアドルで味わうことができるかもしれません。

今度は北極にしましょう。緯度α=90°では方位が決められないのでα=89°としましょう。 右の図は一日おきに(ψ,φ)を打ったのですが、夏至の頃なら23°あたりの高さで自分の周りを一周します。朝・昼・晩といった時間の感覚が失せますね。 なお、残り半分の3ケ月は太陽が地平線の下に沈んだままです。

12-18-2018, S. Hayashi